ひかりの輪 オウム真理教 上祐史浩

平成24年1月30日 官報 号外第22号

調査書「被請求団体のうち『ひかりの輪』の名称を用いて活動する内部組織が、公安調査庁長官宛てに提出した『報告書』に記載していない構成員」 (平成23年9月20日付け)(証7-50)

調査書「『ひかりの輪』が『Aleph』構成員等の名簿を保管していることなど」 (平成21年6月29日付け)

平成27年1月30日 官報 号外第23号

「『ひかりの輪』が欺まん的手法を用いて施設を確保していること」

「『ひかりの輪』が使用目的を秘して福岡福津施設を確保していること」

「『ひかりの輪』が在家の構成員を施設に居住させていること」

「『ひかりの輪』が管理する在家の構成員名義の銀行口座の取引内容」

上祐派が、団体規制法に基づく公安調査庁長官に対する報告で報告していない預金口座において、同派の構成員と思料される者等との間で頻繁に取引している事実に関する報告書 (平成26年11月4日付け)

『【ひかりの輪】が、日常的に会計帳簿の基となる収入内訳の詳細が記載された帳簿データを削除していること』

平成30年1月30日 官報 号外第19号

上祐が、「アーレフ」から分裂後、少なくとも5年にわたり、海外において、麻原から名付けられたホーリーネーム「マイトレーヤ正大師」と呼ばれ活動していた事実に関する報告書 (平成29年10月26日付け)

ひかりの輪 東京高裁 2019年2月28日

被控訴人とAlephの分裂時に,AとAlephの集団指導体制を構成する者らが互いに協力関係を求める発言をしていたことや,Alephと被控訴人の財政,施設の分離も平穏に実行されたこと,Alephにおいては,被控訴人の活動に理解を示す中間派に属する構成員らも少なくなく,各構成員らの交流も容認されていたこと,近年においても,被控訴人とAlephとの間には,構成員の移動や交流も認められることなどに照らしてみても,被控訴人とAlephの分裂という事態は,双方に通ずる共通の宗教的土壌を失わせたものとはいえず,依然として親和性を保っている。

被控訴人の組織形態は,発足当初から一貫してオウム真理教の組織形態の特徴である「位階制度」に基づく指導体制を維持している。

Aは,平成14年11月頃のビデオでの説法において,「麻原彰晃という言葉の意味は,麻原というのは阿修羅を表して彰晃というのは釈迦を表す。(中略)シヴァ大神の化身はマハーカーラ(注:大黒天)であり,グルを表す。そのためにマハーカーラの化身であるとともに大黒柱である正大師に帰依しなさい。」などと述べた(乙B3の1,B3の117)。

Alephの機関誌である「進化」27号(平成14年12月発行)には,Aによるとされる記事が掲載され,「諏訪の信仰は三層構造になっていて,その一つ目がミシャグチ(ミシャグジ)神である。(中略)諏訪の御柱の伝統は,世界に広がる聖なる柱の伝説・儀式と共通性があるということであるが,(中略)シヴァ神のお膝元である,ヒンドゥー密教信仰の盛んなネパールやインドにも,非常に似た柱の祭りがあることが紹介されていたのだ。(中略)それだけではない。四つの柱は四大菩薩を表わし,その中央の空間が大日如来=ヴァイローチャナを表わす胎蔵界マンダラとする解釈もあるそうだ。四大菩薩であるから,当然,弥勒菩薩観音菩薩シヴァ大神の化身)を含むことになる。(中略)こうして,ここ諏訪大社は,シヴァ大神の系統のサインに満ちていた。(中略)日本人なら誰でも耳にする日本の中心的な神社に,シヴァ大神の系統が存在している可能性が高い。(中略)すなわち,日本とは,「シヴァ大神信仰が隠されている国ではないか」ということだ。よく考えると,日本ではお地蔵様より人気のある福徳の神の「大黒天」も,その意味合いが本場インドとだいぶ違うものになっているとしても,ともかく,マハーカーラ・シヴァ大神の化身であることは間違いない。(中略)こうしてみると,日本の諏訪地方のミシャグチ信仰は,インド・ヒンドゥーのシヴァリンガ・シヴァ大神信仰と見事に一致していることがわかるだろう。(中略)この地,諏訪の縄文時代には,十和田の縄文時代と同様に,シヴァ大神クンダリニー・ヨーガの信仰が存在していたのだ。」などの記載がされた(乙G51)。

Alephの元出家信徒は,平成18年9月,公安調査官に対し,「2002年ころ,すでにグル外しを考えていたAさんは,側近サマナに対して「(中略)教団からグルを外し,教団が社会から受け入れられなければならない。教団が社会に認められたころにまたグルを前面に押し出していけば良いじゃないか。私はそう考えている」と熱心に語っていました。」と述べた(乙E48)。

他方,Aは,平成18年4月,d施設における正悟師及び出家した構成員を集めた会合において,中間派正悟師らに対し,「代表派の理念を理解の上,協力関係を進めてほしい。」などと述べて協力を求め,反A派のHに対しても,「A派の皆さんはA派の理念を貫くなりして自らの道を歩んでほしい。」と述べた(乙G52)。

Alephの構成員には,平成20年11月の時点においても,Aleph及び被控訴人の双方の構成員として報告されている者が合計15名おり,双方の施設に出入りしたり,勉強会に参加している者も複数いた(乙G58)。」

被控訴人においては,その設立直前である平成19年3月,ウェブサイト上において,Alephでの位階制度を廃止して役職員制度に移行し,役職をもって組織内の指揮命令関係を位置付け,宗教上・修行上の位階については,Alephにおける位階は踏襲しない旨を対外的に公表し,同年5月の設立に際し,構成員を指導・管理する役職として「代表役員」,「副代表役員」及び「役員」を新たに設けた。しかし,同役職については,松本によって「尊師」に次ぐ位階である「正大師」の位階に認定されたAが「代表役員」に就任し,「副代表役員」及び「役員」に就任した12名のうち9名が松本によって「師」以上の位階に認定された者によって占められ,Alephにおいて「師」以上の位階にあった者は,当時に病気療養中であった1名を除いて,全員が役員に就任した。そして,上記12名のうち「師」以上の位階にはなかった出家した構成員3名についても,AlephにおいてAが創設した「聖準師」ないし「師補」の位階にあった者であった。(乙B3の1,B3の213)
 また,本件更新決定時の被控訴人の役員6名の構成は,正大師であるAが「代表役員」であり,そのほかの5名の出家した構成員のうち,松本により「師」以上の位階に認定された者が3名で,そのほかの2名がAlephにおいて「師補」の位階にあった者であり,いずれも両サリン事件当時からオウム真理教に,その後Alephに所属していた者である(乙B3の1,F32)。

Aは,被控訴人の構成員宛ての平成24年8月23日付けメールにおいて,「現在の大阪道場の部屋割りは,本部合宿の時にも話したが,修正して下さい。Jさんが奥の部屋を使い,Kさん・Lさんが事務所を使うのが,団体の位階からしても,教化活動の視点からも(中略)筋だと思います。」と記載した(乙B3の1,B3の216)。

平成21年12月10日、平成22年6月11日,同年11月1日,平成23年8月1日,平成24年11月1日及び平成25年6月18日に実施されたd施設に対する立入調査では,修法室と呼称されていた部屋(平成26年9月からは法具室と呼称が変更された。)に,「ミシャグチ神」の額入り写真が掲示されている状況が確認された。Aは,この場所について,平成22年4月の説法において,「この第二道場,神殿のちょうど上が私の部屋で,同じく皆さんにお渡ししている法具の修法をする修法室もあります。ここが日光や諏訪の,団体が縁のある聖地との最も縁の深い聖地ラインの上,そこを通っていまして,ここに最も重要な施設を集中して,第一,第二道場を連結させるということが,その聖地のエネルギーを最大限に活用するものだというふうに考えています。」と説いていた。そして,平成26年3月5日に実施されたd施設に対する立入検査では,施設内に掲示されていた大黒天の額入り写真等と併せて上記ミシャグチ神の額入り写真も撤去されたことが確認されたが,ミシャグチ神の額入り写真については,本件更新決定後である平成27年2月5日,同年11月5日、平成28年2月10日,平成29年2月8日及び同年7月11日に実施された同施設に対する立入検査において,Aの居室に設置された厨子の中に保管されていることが確認された。ミシャグチ神の写真が上記厨子に保管されていた事実について,E名誉教授作成の意見書には,「厨子というのは,本来,仏像を収めるための仏具の一種であって,(中略)厨子に収められた仏像は,当然,拝む対象,信仰の対象ということになる。」との記載がある(乙G70の1,G70の14,15,G98,101,102)。
 さらに,本件更新決定後も,Aが「ミシャグチ神を祀る社」と位置付けた御頭御社宮司総社の額入り写真については,被控訴人の仙台施設,鎌ケ谷施設,小諸施設,福岡福津施設等の複数の拠点施設に掲示されており,小諸施設においては,ミシャグチ神に見立てた象徴物である土器人形を「ミシャグチ人形土鈴」,「品名:大黒天」などと記載した箱に保管していた(乙G70の1及び16)。

「功徳」は,被控訴人において,「四つの柱」の一つとされており,d施設や鎌ケ谷施設等において,出家制度(集団居住体制)を維持し,各施設に居住する出家した構成員から収入を「布施」として徴収し,同構成員には毎月現金8000円を支給するとともに,同構成員らに,施設の維持管理や各種セミナーの運営事務等を無償で行わせるというシステムを維持している(乙G89ないし93)。

Aは,同人らが立ち上げた「教団内の問題について」と題するブログに掲載した平成17年6月9日付けの「戸隠の件」と題する記事において,「私たちが,戸隠の現場でなした実践は,グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方を思念しながらの礼拝であり,神社への礼拝でも,神道への信仰でもありません。これは明言致します。」と,同日付けの「戸隠の件の追加回答書」と題する記事において,「そこで思い出すのが,95年に,尊師が私に指示した,オウム真理教以外の宗教組織を立ち上げることでした。その中では,シヴァ大神を大黒天にするなどした宗教組織の案や,その他の案が提示されていました。その時は,オウムの道場活動は行き詰まることは必死の中で,別の宗教的,ないし,精神世界の分野の事業によって,経済を支え,救済を勧めようというものだ,と解釈しています。私は,尊師から,このプロジェクトを任されて,尊師が逮捕された後も,弁護士を通して連絡を取りながら,人事等を検討しましたが,自分の逮捕によって,実現しないままになりました。(中略)戸隠等の山間の修行場,聖地と言われるところを訪問する目的は,色々ありましたが,その一つは,この精神世界の分野の事業の将来を考えてのことでした。(中略)現在の道場活動だけでは収益を維持することは難しく,(注:聖地での瞑想セミナーなどの)精神世界・宗教分野の事業を開発する必要があることは,上記の通り,グルの意思に加えて,多くの成就者が理解するところではないかと思います。」とそれぞれ記載した(乙G103)。

「神柱法輪の瞑想エンパワーメント」を平成24年8月に受けた在家の構成員は,同月,公安調査官に対し,「A代表は,直接的に身体に触れることなくエンパワーメントを行っているのは事実ですが,しかしながら,エンパワーメントの目的は,心身の浄化や悪業の清算といったエネルギーを注入することに変わりはなく,その注入ができるのは,ひかりの輪では,A代表しかいません。」と(乙B3の199),「神柱法輪の瞑想エンパワーメント」を受けた別の被控訴人の出家した構成員は,同年10月,「私に言わせれば,シャクティーパットも金剛法輪エンパワーメントも神柱法輪の瞑想エンパワーメントも同じです。(中略)神柱法輪の瞑想エンパワーメントは,(中略)A代表からのエネルギー,波動が,被伝授者に注がれているということです。(中略)また,一番重要なことは,神柱法輪の瞑想エンパワーメントを行えるのは,過去に麻原氏からシャクティーパットなどのエネルギーを注入する類のイニシエーションを行うことを許されたA代表だけであるということです。(中略)“ひかりの輪”においてA代表だけがエンパワーメントの伝授を行っているという事実は,“ひかりの輪”の中にオウム真理教時代の考え方が根強く残っており,麻原の教えを厳格に守っているからです。(中略)指導員たちは,”A代表は特別な存在だ。霊的エネルギーが違いすぎる。エンパワーメントの類ができるのは,A代表だけだ”と考えています。これは,A代表の霊的ステージは,麻原氏が認定した正大師であるということが,”ひかりの輪”の出家信徒の中に染み付いているからです。」と(乙B3の200),それぞれ述べた。

被控訴人の出家した構成員は,平成26年6月,公安調査官がした会話の録音において,松本に逆らえるかとの質問に対し,「逆らえないよりは,私はされたらされるままだわね。力が全然ないんだから。(中略)話にならないよ。日本の中の,ものすごい聖者がいても,それはできないよね。麻原さんの方が上だと思うから。」と述べた(乙B3の149)。

Alephから被控訴人に移った構成員は,同年7月,公安調査官に対し,「私は,A代表から「私は,尊師の意思として,尊師の名前を出さない団体を作ってもよいと言われた唯一の男性の一番弟子です。私は,尊師から「グルを否定してでも真理を残すように」と言われました」などという発言を直接聞き,安心した記憶があります。このことは,グルが唯一許したA代表が,グル否定を行うのであれば,グルへの裏切りにはならないんだと思いました。(中略)このA代表の発言は,アレフとの分裂が決定的となり,ひかりの輪側のメンバーをこれ以上増やせるかどうかという最終段階の時期であったと思います。」と述べた(乙B3の115)。

被控訴人の出家した構成員は,平成29年10月26日,公安調査官に対し,「現在,ひかりの輪では,「悟りの瞑想ヨーガ講座」や「一元の法則」などの修行・教学を通じて,解脱・悟りの境地へ至り,衆生を救済することを目指しています。ひかりの輪は,修行形態や表現方法を変えることで,この衆生救済というオウム真理教時代の目的を維持し,その目的を実現するための教義を未来に残していくために設立された団体であり,これまで,A代表がひかりの輪設立時に示した「衆生救済に導いていくための教義の根幹部分を残し,麻原色を隠すことで,観察処分を外す」という方針に従って活動してきました。(中略)組織的にAさんの方針を徹底した結果,勝訴判決を勝ち取ることができたのです。」と述べた(乙G67)。

被控訴人の出家した構成員は,平成25年11月,公安調査官がした会話の録音において,「麻原氏に殺されたということはさ。普通ね,地獄とか行かないと思うんですよ。(中略)殺されたっていうことはね,麻原氏と縁ができちゃったわけですよ。殺されたという縁が。だから,そしたらね,全くそういうね,真理の実践者と,私は思っているんですけどね,と縁がなくて,殺,死んじゃうよりは,よっぽどね,良いんじゃないかと。」と述べた(乙B3の148,B6の75)。

被控訴人の在家の構成員は,平成26年,警察官の取調べに対し,「麻原尊師,つまりグルが指示したことを実行することによって,解脱に近づけるのです。一連の事件については,よくヴァジラヤーナを実行したとされ,ポアイコール殺人であり,意味のない無差別殺人事件扱いされますが,そんな短絡的すぎる理由ではないし,世の中でいう頭の良い人たちが多くいたオウム真理教が,意味のないことなどするわけがないのです。(中略)ポアの結果,現時点まで第三次世界大戦は起きていない,若しくは遅れているという事実を捉えるならば,一連の事件については正しかった,成功だったと言えるのではないかと思います。」などと供述した(乙B6の77)。

被控訴人の他の出家した構成員は,平成29年8月,公安調査官に対し,「世の中には,災難に遭う人と遭わない人が存在します。両者の違いは何なのかは,カルマの法則から説明できます。例えば,地下鉄サリン事件や,東日本大震災などで被害を受けるのは,全て被害者の持つカルマが原因で,自己責任です。(中略)神が,人の性格や行いなどを見極め,いつ,どこで,誰に,どのような形でカルマ返りを行うかを決定しており,地下鉄サリン事件で亡くなった被害者についても,同様のことが言えます。(中略)殺すという行為も,殺されるという行為も,カルマ返りの現象として起こっているに過ぎず,殺す側及び殺される側の両方のカルマに原因があると考えます。そして,殺すという行為が,結果として相手の悪業を落とすということになれば,必ずしも悪いカルマを積むことにはならず,法則としては肯定されるものとなります。」と述べた(乙G78の13)。」

ひかりの輪 東京地裁 2019年11月19日

本件更新請求書記載3が摘示した事実は,真実である。すなわち,原告は,86歳の後期高齢者認知症の症状がある在家の構成員を原告の管理する施設に居住させた上で,同構成員の年金受取口座を管理し,寄付金や生活費等の名目で当該口座から金員を引き出して領得した(乙第36号証,第113号証,第126号証)。

平成18年4月19日,後に原告の構成員となるG(原告は,平成19年5月15日付けの団体規制法5条3項の規定による公安調査庁長官に対する報告において,当該構成員Gが原告の役職員である旨を報告した(乙第61号証)。)は,在家の構成員に対し,自分が宗教団体アーレフではなく原告の側に行ったのはBの意思を実践したいからである旨を話した(平成20年10月1日付けの公安調査庁の公安調査官であったIの作成に係る調査書にその反訳が添付された。)(乙第57号証)。

平成19年1月,Gは,在家の構成員に対し,Bへの帰依を見せつけるようなことをすれば多くの人に不安を与える,Bについては世間の人が認めないからそういう場合は水面下に潜って個人で帰依して密教でやるしかない,Bが,2つの団体に分かれるように指示しており,片方の団体はオウム真理教の理念を全く隠した新教団であり,もう一方の団体はオウム真理教をそのまま継続するが在家に戻ってひっそりと密教でやるというものである,原告代表者はBのこのような教えを実践していて,話を聞いてこの人が本当にBの実践を忠実にしている一番帰依のある人であると思った,などと話した(平成26年11月14日付け及び平成27年8月13日付けの公安調査庁の公安調査官であったFの作成に係る各調査書にその反訳が添付された。)(乙第9号証別紙20,乙第62号証)。

平成26年2月13日,公安調査庁による原告の管理する施設の立入検査の際,原告の構成員らは,公安調査庁の公安調査官であったFに対し,86歳で認知症の症状を示している原告の在家の構成員の名義の年金が振り込まれる金融機関の口座の通帳を管理している他の原告の構成員から介護等の費用として毎月2万円程度受け取っている,年金のうち毎月10万円以上が原告への布施になっている,と述べた。(乙第113号証)

平成26年2月,原告の在家の構成員は,Bが最終解脱者で安らぐとともに神秘力があった,だれもがその力を信じて妄信した,オウム事件の波紋で日本人全員がBとの縁ができた,と発言した(平成26年8月28日付けの公安調査庁の公安調査官であったPの作成に係る調査書にその反訳が添付された。)(乙第31号証)。

平成26年8月,オウム真理教の原告代表者の派(J派)の幹部信徒は,公安調査庁の公安調査官であったMに対し,解脱,悟りを目標としている点では自分の考え方ではオウム真理教のときから今まで変わっていない,Alephも目指しているものが同じで原告とは方法が違うだけである,今でもBの霊的な力は本物だと思っている,と述べた(乙第20号証)。

平成26年8月23日,原告の在家信徒の長男は,公安調査庁の公安調査官であったTに対し,父が原告の管理する施設で生活していた際,原告の構成員から父が認知症で介護認定を受けたと聞いた,原告から介護費用を介護保険と年金から支払っていると聞いたが,具体的な額や明細等の説明を受けたことはない,父は不動産の売却で得た金員と退職金をどうしたのか分からない,と述べた(乙第112号証)。

ひかりの輪 東京地裁 2020年2月27日

Bは,平成18年8月頃に発行された「聖地巡礼-悟りの旅」と題する資料において,「聖地巡り」の目的について,「シヴァ大神や真理勝者(如来)方の有する,大いなる慈悲の心に近づく意味もある,と私は思います。」と記載していた(乙B3の101)。なお,原告の設立前であるが,平成17年5月30日にアーレフの部内向けインターネット掲示板に投稿された記事においては,「将来において,尊師に帰依できず,尊師のイニシエーションが得られない人達について,尊師が95年に指示されていたように,直接尊師でない崇拝対象を設けて,救済するという考えがあることを述べましたが,その際も,その人達の瞑想修行の場所としての聖地を用意することは重要だと思います。」と記載されていた(乙C89)。

Bは,平成18年5月14日の説法において,「観音菩薩って衆生を全て救済するために千の手段を持っているんです。うん,だから,A尊師の手段もあるし,他の手段もある。33の化身を持っていると思います。A尊師の姿もあるし,他の姿もある。私はそれが観音菩薩の慈悲の化身の特徴だと思いますし,あの,ダライラマ法王も観音菩薩って言うんですよね。(中略)尊師と巡り会って尊師の弟子であった20年間は捨てられません。それは過去の歴史として捨てられない。(中略)私はマイトレーヤ正大師と呼ばれて,尊師はマイトレーヤの化身となっています。マイトレーヤは,本当にこの教団の二つの側面を表しています。ある意味じゃ,一つ目は古い,それは要するにマイトレーヤ,次期如来としてほとんど神に近い。そして,尊師がその化身でキリストだと。尊師は絶対者でキリストで,キリスト教でいえばキリスト。仏教でいえば,仏教におけるキリスト,絶対の救世主っていうのはマイトレーヤですから。(中略)旧教団と新教団の二つ。両方ともマイトレーヤかもしれない。(中略)ホーリーネームは捨てても,ホーリーネームの精神は引き継ぎます。それは,過去は捨てられないですから。」などと述べた。

Bは,平成18年5月の説法において,「今まで教団には音のイニシエーションというのがあったわけですが,それを更にパワーアップした形での聖音のイニシエーションというものが今後,可能になると思います」などと述べていたところ,原告においては,平成19年5月の集中セミナーから「聖音波動エンパワーメント」(被伝授者の周囲に密教法具を配置し,その音を被伝授者に聞かせるというもの)及び「聖音法輪エンパワーメント」(被伝授者の周囲に複数のスピーカーを円状に配置し,それらから密教法具の音を被伝授者に流し聞かせるというもの)と称するイニシエーションを導入し,その後,平成25年4月には「聖音波動法輪ヒーリング」に名称変更するなどした(乙B3の153)。

Bは,上記eのとおり,大黒天に関する新たな解釈が見つかったと発表したのを契機とし,平成21年8月の説法において,「ミシャグチ神というのは,実は,マハーカーラと結びつくということが分かりました。正確にいうと,ミシャグチ神と摩多羅神というのが一体で,その摩多羅神がマハーカーラと一体。(中略)そうすると上高地の時にもお話しした大黒柱の大黒天にまつわる啓示的ヴィジョンと,それは2002年ですから7年前なのですが,そのミシャグチ神による守護と言うのは,1つの系統の神様の啓示と守護だということが分かってくるわけです。」などと述べた(乙B3の97)。

また,実際の原告における状況を見ても,①原告は大黒天像を焼却した平成26年8月以降も,従前と同様に「聖地巡り」としてミシャグチ神を祀る場所への訪問を継続していたこと(認定事実(3)ウd),②平成26年3月の立入検査では,原告の施設(法具の修法を行う部屋)に掲示されていたミシャグチ神の額入り写真は撤去されたものの,平成27年2月から平成29年7月までの5回の立入検査において,Bの居室内の厨子の中に同写真が保管されていることが確認されたこと(認定事実(3)ウd)に照らすと,原告においては,「思想哲学の学習教室」ないし「哲学教室」へ変革したとされる時期以降も,ミシャグチ神等にAを投影した崇拝等を継続していたものと推認され,これによっても,原告における上記変革がA及びその教義を否定するとの仮装工作の一環にすぎないことが裏付けられているものといえる。

公安調査官は,平成24年2月3日,平成26年2月13日及び同年8月1日,平成27年2月5日,平成28年6月7日,平成29年4月28日等に千葉県鎌ケ谷市所在の原告の施設に対する立入検査を実施したところ,施設内に設置されたキャビネットにAの説法を収録した「尊師ファイナルスピーチ」I~IV,「ヴァジラヤーナコース教学システム教本」,「改訂版特別教学システム教本」等の教材が保管されているのを発見した(乙C91)。

原告は,上記基本理念の改正により,自らを「思想哲学の学習教室」ないし「哲学教室」と正式に位置付けたと説明している。しかし,平成26年2月3日,公安調査官が大阪府に所在する原告の施設に対する立入検査を実施した際には,同施設内の祭壇上部壁面には,釈迦牟尼仏画のみが掲示されていたのに対し,同立入検査の前後である同年1月31日及び同年2月8日には,上記壁面には,弥勒菩薩観音菩薩及び釈迦牟尼の三仏全ての仏画掲示されていた(乙B3の111~112)。

公安調査庁長官に対するAleph及び原告の報告や公安調査庁の調査によれば,Alephの構成員で,平成28年2月以降,原告に入会していないが原告の活動に参加することがある者が1名,原告の活動に参加することがあったが,その後,Alephに入会した者,Alephの会員ないしその行事に参加した者であるが原告の説法会に参加している者2名などが存在する。

原告は,本件更新決定時においても,集団居住体制を採用し,一般社会と隔絶した孤立的・閉鎖的なコミュニティーを形成しているほか,本件観察処分に基づく公安調査官の立入検査の際にも,布施やイベント参加費等の収入の詳細が記載されたデータの存在を隠匿したり,立会人となった構成員が公安調査官の質問に対して回答を拒否したり,無視したりするなどしたことが認められ(乙B8の10),こうした対応はその活動実態を積極的に明らかにしようとしないものと評価せざるを得ない。
また,原告は,団体規制法5条3項に基づく公安調査庁長官宛ての報告書において,構成員や資産の一部を殊更に記載しない等の不正確な報告を繰り返している(乙B8の20,8の22,8の40~53)。